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アパホテルが上場しない理由

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アパホテルはこれまで、株式公開していない「非上場企業」ゆえ、詳細な決算を公表していませんでした。ところが2017年に入り突然、APAグループとして2016年度の決算を公表したことが話題になりました。外国人観光客の激増が原因で、全国的にホテル稼働率が上昇、業界が活況に沸いていますが、アパも売上高が対2015年比で20%以上の増益と、推測されていた通りの好決算でした。

  売上高 営業利益 当期純利益
2015年11月期 91035 32008 28190
2016年11月期 110501 37116 19990
前年比増減 +21.4% +16.1% +11.6%

アパグループの連結決算(出典;アパグループ公式サイト

アパが急にスタンスを変え、売上高などの決算を発表した事で「株式上場する布石だ」との口コミがネットの掲示板やSNSに広がりました。しかしアパグループが株式上場する可能性は低いと考えられます。

アパホテルが上場しない理由の一つが、会社(≒元谷社長)の自由な意志決定を維持するためです。上場すると株主から意見されるうえ、コンプライアンス強化や一般社会への迎合を強要されるので、元谷社長の右翼的思想が貫けなくなるのは確実です(※注)。アパグループは良い意味でも悪い意味でも、元谷社長夫妻によるワンマン企業ですから(それが高成長の原動力でもある)、自由を失うことは行いたくないはずです。

※注;アパホテルの客室には、元谷社長の主義で『本当の日本の歴史 理論近現代史』という、南京大虐殺がでっち上げだという本がおかれており、その事に中国人などが噛みついて騒動に至りました。上場企業なら間違いなく書籍回収を余儀なくされていたでしょう。

上場しないもう一つの理由として、他社からの敵対的買収を避ける意味もあります。株式を上場すると、第三者に株を買い占められて、会社を乗っ取られる危険性が出てきます。ライブドアのホリエモンがニッポン放送(フジテレビ)を我がモノにしようと、敵対的買収をかけたことが有名ですね。アパホテルはおそらく日本一高収益な宿泊施設なので、買収したいと考える企業は山ほど居るはずです。元谷社長は、買収合戦で消耗させられるリスクを避けたい訳です。

このような理由から「上場したら株価暴騰間違いなし!」との口コミで溢れているにも関わらず、アパホテルは決して株式上場しなかったのです。創業者である元谷夫妻は、上場すれば日本屈指の大資産家になるはずですが、自分達の意志でビジネスを続けていく事の方が、人生における優先順位が高いのでしょう。

元谷夫妻が退いた後なら上場の可能性も高まるでしょうが、上記のように彼らがビジネスの一線から身を引くことは考えづらく、生涯現役を続けるでしょう。よって二代目社長が誕生するのは、元谷夫妻が亡くなった後になるので、まだまだ先の話になります。

但し一点だけ、アパグループが上場を考えるかも知れない理由もあります。それは、巨額の負債コストを借り換えで軽減する目的の上場です。

今回の決算公表でアパグループが発表したのは売上高や利益だけでした(バランスシートは非公表)が、信用調査会社の推計によると、2015年時点で有利子負債は2000億円規模だとの予測です。アパホテルはリーマンショック後に地価が暴落する中、逆張り経営で土地を大量に取得していった事が、今日の繁栄に繋がっています。一方で、攻めの経営の代償として借入金が増大しており、経営に過度のレバレッジが掛かっている(リスクが高い)訳です。

株式上場して真水の資金調達ができれば、有利子負債の圧縮も可能です。日銀のマイナス金利が続く限りは心配は薄いですが、長期金利が上昇局面に転じれば、有利子負債の負担を減らすため、予測に反して株式上場の申請を行ってくる可能性も少しはあるかも知れません。

アパホテルの利益率が高い理由

アパホテルの宿泊料金は「レベニューマネジメント」と呼ばれる変動相場性で、一泊いくらなのかは需給状況を見て各ホテルの支配人が日々値付けを変えています。この事が、東横インやドーミーインなどのライバルに勝る点です

近年の東京ではホテル不足が深刻で、典型的なビジネスホテル系の部屋(15平米以下のシングルルーム)ですら、一泊2万円以上する日も珍しくありません。2012年頃までだと精々1万円未満だった部屋が、2倍以上になっているのですから「最近のアパホテルはボッタクリだ!」という口コミが溢れているのも無理ない話です。

ホテル業というのは、運営コスト(人件費・光熱費・減価償却費など)の大部分が不変なので、客室単価が上がればその分は丸儲けです。東京近郊の多くのホテルでは、稼働率の上昇で増益していますが、アパホテルは加えて客室単価を釣り上げ「ボッタクリ」と揶揄される価格でボロ儲けしているのです。

もう一つ、アパホテルが高収益な理由は、宿泊のみに特化したビジネスモデルだからです。ホテルには宴会・婚礼・飲食など様々な付帯ビジネスを行っていますが、最も利益率が良いのは本業である「宿泊」なのです。特にビジネスホテルだと、宿泊原価は一室2000〜2500円程度に過ぎないのです(出典;なぜビジネスホテルは一泊4千円でやっていけるのか)。東京や大阪のアパホテルは地代が高いのでもう少し原価はかさむでしょうが、一泊2万円も取っていれば「ボロ設け」であることは明白です。

日本のシティホテルは、宿泊部門だけでは赤字なので、宴会や婚礼、飲食など別部門で賄うというビジネスモデルでした。しかし宴会や婚礼は、数十人単位で専属の運営スタッフが必要で、コスト負担も大きいのです。結果的にシティホテルでは、売上高は維持していても利益率が低く、景気に左右されやすい脆弱なビジネスモデルでした。

ちなみに前述の歴史認識問題で、中国人の宿泊数は減少したようです。しかし、元々中国人客の比率は低いことや(アパホテルはビジネス客中心)、昨今のマスコミの自虐史観・売国報道に辟易していた日本人から賞賛・応援された事の方がはるかに大きく、2017年1月の売上高が過去最高になったそうです。可能性は低いと思いますが、仮に上場するとなった際には、この元谷社長の我が道を行くスタイルが貫けるのかが注目すべきポイントです。

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