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空売りの注意点〜過去の高額逆日歩ランキングなど

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前項では株の空売りについて解説しました。空売りを使えば、将来値下がりしそうな株を狙って利益を上げることが可能になります。リーマンショックに見舞われた2008年後半のような一方的な下げ相場でも、空売りを使えば利益を上げるチャンスが大いにあった訳です。

しかし空売りは非常にリスクの高い行為であり、注意点が幾つもあるのでまとめてみました。

空売りの注意点(リスク)目次
制度信用では逆日歩が発生するかも?
逆日歩の記録ランキング
制度信用では期限がある(最大6ヶ月間)
一般信用は逆日歩も期限も無いが・・・
空売りはほぼ全ての市場関係者と利益相反する

1.制度信用では逆日歩が発生するかも?

空売りは「制度信用取引」を利用する方法が基本ですが、逆日歩という未知のコストが発生する可能性があります。この不確定要素が、空売りのリスクの一つ目です。

空売りでは、その株を保有している投資家から借り受けてから売るわけですが、当然、貸してくれる投資家が少なかったり、借りたい(空売りしたい)投資家が多すぎて、成立しないケースも出てきます。そのように需給が逼迫してくると、借りる人に「逆日歩」という特別コストが発生するのです。

逆日歩は、普段の空売りでは発生しないことがほとんどです。しかし、決算月〜株主優待の権利落ち日や、企業が業績の悪化や増資発表など、投資家にマイナスな行為が公表された際には、空売りしたい人が激増するので、逆日歩が発生する可能性が高まります。

信用倍率が1倍以下(信用買いより信用売りが多くなる状態)になると、逆日歩発生の要注意サインです。しかし、信用残高は一週間に一度しか公表されないので、突然の空売り増加に投資家が気づくことは、原理的に不可能なので注意です。

逆日歩の記録ランキング

ここでは、どの位の逆日歩が発生するものなのか?過去の高額逆日歩発生ランキングをまとめてみました。

・高額逆日歩ランキング1位=ダイナシティ【8901】JASDAQ
2008年11月5日、株価49円に対して1000円もの逆日歩が発生。ただしこの株価は、前日に倒産が発表された後の寄り付き価格で、この日は既に売禁でした。倒産発表前の空売りできた時点での株価(429円)で換算した場合、233%という逆日歩となる計算で、これが日本の株式市場における最大逆日歩ランキング1位の記録です。

・高額逆日歩ランキング2位=音通【7647】大証2部
2012年9月25日、株価15円に対して、18円の逆日歩が発生、株価の約120%のコストとなりました。音通は株主優待(5千株保有で3千円分相当)があったため、約7〜8万円の投資額に対する優待利回りがかなり高く、クロス取引したい個人投資家が殺到した事が原因です。

・高額逆日歩ランキング3位=中央コーポレーション【3207】東証二部
2008年8月19日、株価86円に対して1株あたり45円の逆日歩が発生。株価の52%に相当。米国サブプライムローンバブル崩壊の影響で、日本の不動産市場も下落。同業のアーバンコーポレイションが倒産した事で、中央コーポレーションにも大量の空売りが発生した事が原因。

・最近の高額逆日歩の事例=ホットランド【3196】JASDAQ
たこ焼き屋の上場として有名になったホットランドが、2017年12月26日に株価約1500円に対して逆日歩135円(6日間)が 発生。12月末決算の株主優待クロス取りによる空売り需要増加に加え、正月休みが絡む日程のため、一日で6日間の逆日歩が付くという特殊事例でした。 ホットランドの優待は1500円相当の割引券でしたが、クロス取引した人は13500円ものコストを払うという本末転倒に陥りました。

・・・これらの事例で分かるように、倒産・上場廃止懸念のある企業や、優待株の権利落ち日〜中でもJASDAQや東証二部など浮動株が少ない銘柄ほど、高額な逆日歩が発生するリスクが高いです。土日祝日が絡む日程では、逆日歩は数日分一気に掛かるので、12月のように市場の休場日が関連してくる銘柄は特にハイリスクです。

制度信用では期限がある(最大6ヶ月間)

また制度信用取引では、空売りは最大6ヶ月間という期限が設けられています。つまり6ヶ月たてば、それ以上空売りしていたいと思っていても、一度強制決済を余儀なくされるのです。

例えば貴方が「シャープに未来な無い!絶対に破綻するから永久に空売りだ!」とか思っても、シャープ株を永久に空売りし続けることは出来ないので、注意が必要です。世の中に「長期投資」はあっても「長期空売り」はありえないのです。

一般信用は逆日歩も期限も無いが・・・

一方で、制度信用ではない方法〜一般信用取引での空売りなら、逆日歩は発生しませんし、ほとんどの場合で無期限です(6ヶ月以上でも空売り続けられる)。一般信用の貸株料は年3%程度と、制度信用(2%)よりも高いですが、株価変動に比べればわずかな金額にすぎません。

このように一般信用での空売りは圧倒的に有利な方法に見えます。しかし、一般信用にも注意点はあり、それは「数が限られている事」です。

一般信用で空売りするための「貸株」は、各証券会社が独自に調達したものです。従って(日証金を通じるなどして)広く市場から株を集められる制度信用よりも、圧倒的に「球数」が少ないのです。また証券会社毎に在庫に差が生じるので、「SBIでは貸株の在庫があるのに松井では品切れ」などという状況が起こります。

従って、特に人気の優待株などは、権利落ち日のずいぶん前から「品切れ」になることが大半です。一般信用での空売りは、便利だけど使えないケースが多く、アテにならない方法なのです。

空売りはほぼ全ての市場関係者と利益相反する!

そして最も大事な観点であり、かつ最も見落とされがちな注意点は、空売りという行為は「株式市場、ひいては日本経済全体の流れに反する行為だ」という事です。

日本経済は、空売りする人を除いて、ほぼ全ての人々が株価が上昇するように行動を取るのです。企業の従業員は、会社の業績が良くしようと(つまり株価にとってプラスになるように)努力します。当たり前ですが、会社の業績を悪くしようと思って働く従業員などいないです。

また証券会社や東証などの取引所も、株価が上昇基調を描き、株式市場全体が活況になることを望んでいます。証券会社も証券取引所も、主たる収入は売買手数料収入ですから、株式市場が落ち込めば、売買が活発化せず、手数料収入も減少します。よって彼らもまた、株式市場が上昇基調を描くことを望んでいます。

そして国(政府)も、株式相場が停滞すると、不況を招いて税収が落ち込む上に、財界や国民からの支持率も下がります。だから株式市場にプラスに働く法制度を設けたりして、市場の活性化を図ります。現在、株の売買益や配当金に対する課税は20%ですが、小泉政権下の2003年には株価対策として10%への軽減税率が適用されていました。

つまり、政府も証券会社も企業の従業員も、そして(空売り分よりもはるかに多い)普通に株を買っている人たちも、全ての人々が株価の上昇を願tっているのです。そして場合によっては、制度や法律を変えてまで株価が上昇するよう努力するのです。

株価が下がることを望んでいるのは空売りしている人だけであり、空売りは株式市場に関わる全ての人達の行動と利益相反する行為なのです。空売りは、リーマンショックのような金融危機時には有効な投資手段となりえますが、あくまで臨時的・補助的な投資手段であり、日頃は日本経済の「川の流れ」に逆らう危険な行為だという事は、絶対に忘れてはいけません。

空売りの注意点(リスク)まとめ
・逆日歩という特別コストが発生する可能性がある
・過去の高額逆日歩ランキングでは、100%以上の事例も!
・一般信用なら無期限だが、貸株数が少なくアテにならない
・空売りは日本経済全体に利益相反する危険な行為!

最後に、空売りとはのページでも強調しましたが、株価というのは、下落はゼロ円までしか下がりませんが、上昇は青天井で制限がありません。空売りの利益は最大でも100%未満ですが、損失は無限大です。空売りは、通常の投資よりもリスクが高い行為なので、最大限の注意が必要な投資方法なのです。

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