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増資が株価へ与える影響

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増資とは、企業が現在発行している株式とは別に、新たに株を発行する行為の事です。リーマンショック後の株式市場で、増資する企業が頻繁に見られましたよね。

企業は、株式市場で売られている株価がどうなろうと、財務に影響はありません。自社の株価が上昇しようが下落しようが、その企業の資金繰りには基本的には影響しません。企業が資金調達できるのは、株式を発行して市場に流す時(IPO)のみであり、それ以降に新たに資金調達したければ、増資する事が必要なのです。

では、一般の投資家からすると、増資される事はどういった影響やリスクがあるのでしょうか?結論から言うと、増資が行われた場合、その企業の株価は9割以上の確率で下落します。増資をすれば発行済株式数が増えるので、既存の株主の利益が小さくなります。この影響の事を、一株利益の希薄化といいます。

例)今期の利益が3億円、発行済株式数が10万株の会社が、5万株の増資を行う
増資前: 一株利益=3億円÷10万株=3000円
増資後: 一株利益=3億円÷15万株=2000円

この例では、株主利益が約33%ほど希薄化されることになります。このように、株主利益が希薄化されることがリスクだと投資家が感じるので、株価が暴落するのです。

しかし、増資による資金調達で事業を拡大し、将来的に会社の利益が増加していけば、株主にとってプラスになることです。原理的には、増資は長期的には企業にとって(≒投資家にとって)プラスに影響するはずなのです。

ところが実際の株式市場では、増資が発表されると、極めて高い確率で株価は暴落します。その理由は、全ての投資家が長期投資を前提にしていないからです。

ヘッジファンドは言うまでもなく、個人投資家も多くの人が、短期的な株価の上昇・下落に一喜一憂し、気長に株価の上昇を待てる人は少数です。従って大半の投資家は、増資による長期的な企業の成長よりも、短期的に株価が希薄化するリスクを嫌うので、株式を投げ売りがちになります。この影響が、増資によって株価が高確率で下落する理由です。

資金繰りの為の増資が、最もリスクが高い

しかし、もう一つ増資が投資家に嫌われる理由があります。日本で企業が増資する際、長期的な成長展望を伴わない、悪い増資が多い事です。経営が悪化した企業が、単なる資金繰り策として苦し紛れの増資を行うケースが後を絶たないからです。

リーマンショック後に、日立や東芝やNECなど電機大手がこぞって増資を行いましたが、決して将来の明るい展望を抱かせる増資ではありませんでした。企業の短期の資金繰り〜リスク回避策であることが見え見えだったので、株価は大きく下落しました。

中でも最も酷くかったのは野村證券(野村HD)で、わずか半年の間に3900億円と2700億円という、2度の巨額の増資を行いました。リーマンショックによる金融市場への悪影響で、野村證券が倒産のリスクに瀕していた為、苦し紛れの延命増資である事は明らかでした。当然、野村HDの株価は大暴落し、既存の株主は多大な被害を被りました。

企業の資金調達は、デットファイナンス(銀行からの借り入れや社債の発行)と、エクイティファイナンス(株式の発行)の2種類があります。デットファイナンスは所詮は借金ですから、いずれは調達した資金を返済する必要があります。しかし、エクイティファイナンスで調達した資金は、返済の必要はありません。よって、資金繰りに困窮した企業が、苦し紛れに増資するケースも多いのです。

なお、例外的に増資が株主利益の希薄化にならず、株価が下がりにくい銘柄もあります。それはREIT(不動産投資信託)です。原理的にREITは、毎期の利益を内部留保できないので、成長(新たな物件を取得する)には、増資するか、銀行から借り入れするか、どちらかしかありません。

そしてREITは、得られた資金は基本的に不動産物件を購入するという明確な目的があり、物件が増えればREITの収益も増えます。株主利益が希薄化しても、増益で相殺される可能性が高いので、REITの増資は株式市場ではあまり嫌われず、株価が下落しないことも多いのです。

増資銘柄の空売りは危険!?

増資を発表した企業は、長期的にはともかく、短期的には株価が下落する傾向が強いです。

勘の良い人なら、この性質を利用して「増資を発表した企業の株を空売りすれば儲かるのでは?」と考えるでしょう。確かに確率的には、増資発表直後から株価は下落することが多いです。

しかし当サイトでは、安易に増資銘柄に空売りを仕掛けるのは危険だと警告しておきます。その理由は、空売りは読みが裏目に出たときのリスクが極めて大きいからです(詳しくは空売りの注意点のページをご覧ください)。

また「増資→空売り」というのは、少し知識のある投資家なら誰でも思いつく手法なので、空売りしたい人が激増して高額の逆日歩が発生して利益が消し飛ぶリスクだってあります。また逆日歩の無い一般信用取引だと、あっと言う間に品切れになるので、一介の個人投資家が空売りできる機会は滅多に無いです。

増資の株価への影響まとめ
・増資を発表した企業の株価は高確率で下落する
・大半の投資家が短期思考。また単なる資金繰り増資が多い
・増資銘柄の空売りもリスクがある

過去にも、増資発表直後に値上がりしていき、ショートした投資家が大損こいたケースは沢山あります。初心者がろくにリサーチもせず「増資=空売りだ!」と短絡的なトレードを行うのは非常に危険です。

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