| ドルペッグ制(固定相場制) | 【 WEB金融新聞 】 | 平成19年 12月 発行 |
ドルペッグ制の問題点前項「ドルペッグ制とは」にて、米国ドルと為替レートを固定する為の2つの政策を解説しました。しかし、いずれの方法についても、深刻な問題点を抱えています。 まず、サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)など中東の産油国で多い、自国の金利をアメリカの金利と同一にする、金利調整型ドルペッグ制の問題について。 アメリカ金利連動だとインフレ抑制が出来ない自国の金利をアメリカの金利と同一に保つことは、国内物価を調節できなくなる危険性をはらんでいます。金利というのは本来、物価を適切な水準に保つ為に調整されます。国内でインフレが強まれば、金利を上げることでお金が貯蓄に回りやすい状況を作りだして、インフレを抑制します。 しかし国内がインフレで利上げしたくても、アメリカが利下げすれば、ドルペッグ制を維持するためには利下げせざるを得なくなります。これでは、自国の物価調整が不能になり、ハイパーインフレなどの経済混乱が起きかねない状況に陥ります。その為、原油価格高騰の恩恵で経済好調な(=インフレ圧力が強まっている)中東諸国では、アメリカが利下げ局面に入った2007年後半より、ドルペッグ制廃止の動きが強まっているようです。 クウェートでは2007年5月よりドルペッグ制を廃止しています。サウジアラビアやUAEなども、これに追随する可能性が高まっています。もしこれらの産油国がドルペッグ制を止めて利上げに踏み切れば、金利差による米ドル安を生む要因にもなりますし、最近高騰を続けている原油価格にも影響が出てきます。 日本や中国の外貨準備金≒アメリカ国債また、為替介入型のドルペッグ制にも問題はあります。この制度が拡大していけば、アメリカ国債の大部分が米国以外の国が保有していることになり、国債価格に大きな影響が出る懸念があります。日本のようなアメリカに従順な国ならともかく、中国などはいつ一斉にアメリカ国債を売り出すか分かりません。もしそうなればアメリカ市場だけでなく、世界のあらゆる市場が大混乱する恐れがあります。 経済成長著しい中国やインドでは、ドルペッグ制による外貨準備金(≒アメリカ国債)の保有高が膨大に膨れ上がっています。2007年度には、中国の外貨準備金が日本を抜いて世界一になりましたが、日本の外貨準備金が減っている訳ではなく、中国の額が恐ろしいペースで伸びているのです。 しかし中国にしてみても、大量のアメリカ国債を自国が抱えこむことは、決して好ましいことではありません。いくら介入しても、市場原理により徐々に人民元高は進んでいる現状があるので、将来的にアメリカ国債が元本割れ(元ベース)になる可能性があるからです。 かといって為替介入を止めてしまえば、ドル安=人民元高が一気に加速することは確実ですから、輸出で儲けている中国にとっては大損になります。結局は、現在の利益を優先すれば将来の利益が減ることになり、ドルペッグ制はその場しのぎで負債先送りの政策に過ぎないとも考えられます。 つまり、金利調整策にしろ為替介入策にしろ、本来市場原理に基づいて動く為替相場を無理やり操って固定相場制を図る行為は、国の政策に大きな歪みを生み出すことになり、長期的に見れば決して好ましい政策ではないのです。 |
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